商標キーワード運用の理想的なリスティング広告戦略

ウォルト・ディズニー社から、

貴方に商標キーワードの運用をしてほしい

と連絡がきたときに自信を持って挙手できますか?
「いやいや私なんかが…」と萎縮してしまいますか?

このような依頼が大手からきたときにも「間違いなくどこよりも私が一番成果を発揮できるぞ!」と我先に手を挙げられるよう、商標キーワードの取り扱いをおさらいしたいと思います。

広告主はもちろん、リスティング広告運用を任せられてる広告代理店やアフィリエイトメディアなんかも参考になるかと思います。

「いまさら商標キーワードの運用で悩むことなんかないわw」という方も、少しだけ読んでみませんか?

※立場によって運用方法は異なります。CPAを大きく上回ってでも1位を取りにいく場合もあれば、そうでない局面もあります。ケースバイケースということは念頭に置いてお読みいただけると嬉しいです。

商標キーワード運用の落とし穴

商品を売るときに広告費を投資する際は、目標のCPAを設定します。

しかし、媒体やプロダクトごとの適切なCPAを決めている会社は多くありません。媒体やプロダクトごとにリピート率だったり検索に落ちてくる割合など、様々な数値が違うので本来決めるべきなのですが…。

全体のCPAだけがハッキリ存在していて、商標キーワードのCPAに関してはザックリなことがほとんどで現状の数値を指標とするしかありません。

ここが落とし穴で、現状のCPAが適切なのかどうかがよくわからないという状態です。

そもそも商標キーワードはCPAが安くて当たり前ですよね。目標CPAが1万円の商品に対して、商標キーワードのCPAが2千円で獲得できていると「まぁ、こんなもんだろ」と錯覚してしまいがちで、チューニングを行う優先順位もだいぶ低いことが多いです。

商標経由のコンバージョンが月間1,000件あるとすると、CPA2千円で獲得していたら広告費は200万円。しかしCPA100円で獲得できるようになれば広告費は10万円で済みます。

広告費:2,000,000円
広告費:100,000円

その差、190万円です。

「大袈裟では?」と思いましたか?いやいや、結構あるんです。僕はこれまでにリプレイス案件で何度も経験していますし、本記事を商標運用の見直すキッカケとしてぜひ活用してみてください。

商標キーワードの基本的な運用方法

キーワード構成

商標キーワードの完全一致絞り込み部分一致の出稿。それに表記ゆれのカバー。
同じ名称を含む別製品や別サービスがある場合はまた少し運用は変わりますが、基本的にはこれだけでOKです。商標の運用で商標の検索数を増やすことはできませんので。

部分一致はかなりの拡張性があり、商標からは想像もつかないような検索クエリに表示されることもあります。同じ広告グループに入れてしまうと、商標の動向のノイズとなり可視化も難しくなってしまいます。

かと言って、部分一致を出稿しないのはそれはそれで機会損失なので、商標キーワードの部分一致は、一般キーワードを出稿している広告グループで出稿したうえで、商標キーワードを除外キーワードとしてフレーズ一致で登録しておく運用がおすすめです。

入札

商標に限らず、検索連動型広告の入札状況は競合による変動がかなり大きく、それに頻繁です。

商品の知名度が上がれば上がるほど自社の商標を利用したキーワードの出稿も増えやすいですし、商標名によっては他サービスと類似したり被ったりすることもあります。

なので競合の出稿状況に合わせて入札戦略を変えることをおすすめします。

ほとんど競合がいないようであれば個別のクリック単価(拡張なし)でも機会損失なく上位表示できますし、競合がひしめいている状況ならスマート自動入札を使って工数少なく上位をおさえるのも手です。違反出稿しているメディアがいるようであれば警告して競合を減らすのが最優先ですね。

状況によってどのような入札がベストが考えましょう。

広告文

自社の魅力を最大限に引き出せるようなコピーはもちろんですが、広告文はSERPsに合わせるのが一番かと思ってます。

商標に限っては、

商標名 | 公式サイトはこちら
という広告でも充分安いCPAで獲得できます。なぜならこの広告文を使えるのは自社だけだから。商品の魅力は誰でもいくらでも語れますが、「商標×公式」を謳えるのは自社だけです。

それにSERPs上で映えることが多いんですよね。自社商標をキーワードとして入稿している競合は、いかにその商品より自社が長けているかアピールしようとするためごちゃごちゃした広告文で出稿していることが多いんです。あとはSERPsのオーガニック上位なんかも物販だと「Amazon、楽天、アフィリエイトサイト」であることが大半なのでシンプルな広告が逆に反応良かったりします。

訴求が複数あるならどの訴求が一番刺さるかテストしたり、複合キーワードとして検索語句に多く上がってくるクエリを広告文にいれたり、そんなことを繰り返しつつある程度の鮮度を保ちながら運用するのがベストです。

LP

商標を検索するユーザーは基本的に[公式の情報が欲しい]もしくは[公式以外の情報が欲しい]のどちらかです。

なので、

  • 公式であることをアピールした広告文で、LPトップをセット
  • 上記と類似しない広告文で、口コミや使用感を記載した箇所にページ内リンクでセット

の2軸で運用するのが初動の傾向みる構成としてはバランス良いかなと思います。

CPAを下げるには

上記含め、リスティング広告運用の基礎を愚直に行うしかありません。

簡潔に言うと競合が減って、高い広告ランクを叩き出しながら入札を下げればCPAは下がります。

まず1つ目。
競合についてですが、まずは自社のプロモーションを違反出稿として行っているメディアを止めることです。そして他社の広告文に自社商標が使用されている場合はプラットフォームを通して警告することができます。これは後述します。

2つ目の広告ランクについて。
参照とするシグナルが多いですが、広告の品質を上げることは間違いなく広告ランクを上げることへの近道です。品質を上げるには推定クリック率キーワードと広告の関連性広告とLPの関連性の3つが重要指標です。

広告ランクのシグナルとロジックについてはGoogle広告ヘルプを読み込むべきですね。

参考 広告ランクGoogle広告ヘルプ 参考 広告の掲載順位とランクの仕組みGoogle広告ヘルプ

広告主や広告代理店がとれる商標まわりの対策

商標登録

商標は出願してから受理されるまで1年はかかることもザラなので(最近だと1年半くらいかかるケースもあるみたいです)間に合っていない場合もあるかもしれませんが、商標登録を行っていない事業主は意外にも多いものです。

「商標登録してますか?しませんか?」と持ちかけても「しないとは、と思ってました!」で終わってしまうことも後をたたず…。

短期決戦の場合は構いませんが、長期的に商品を売っていくケースがほとんどかと思うので商標登録は必ずすべきです。メリットばかりなので。

商標登録の主なメリット
  • 第三者の使用を防げる
  • 偽商品を淘汰できる
  • 社会的な信用の獲得
  • 他人へのライセンスも可

商標登録の是非は特許庁の商標活用ガイドがわかりやすいので商売する人は必読です。

参考 事例から学ぶ商標活用ガイド特許庁

クライアントに商標登録の重要性を説明しても「たしかにそうですね、検討します。」とサラッと流された場合には上記のガイドをスッと渡しておくのをおすすめします。

事例付きなので自社に置き換えてイメージしやすくハッとなる企業も多いはず。

競合による商標出稿はどう対処すべきか

自社商標で検索したときに、競合他社の広告ばかりが出てくるとうんざりしますよね。

しかし、他社商標を広告文ではなくキーワードとして入稿するのは戦略の一つだと僕は考えますし、プラットフォームもそれを禁止していません。

キーワードとしての商標の使用については、Googleの調査や制限の対象となりません。

Googleポリシーヘルプ:商標

そもそも「キーワードに入札することで広告出させてあげますよ」というプラットフォームがあるというだけの話で、「商標権所有者様は独占で広告を配信できますよ」というサービスではないんです。

もちろん「商標を侵害するような悪意ある掲載方法」や「許可なく広告文に使用する」ような行為はGoogleポリシー云々以前に法律的にもアウトですが、部分一致の拡張として他社商標に対して表示されるケースもありますし、悪意ある競合だけではないということも頭に入れておいてください。

「ここがうちの商標で入稿してるぞ!ただちにやめさせよう!」と動く会社が多いですが、法律も媒体も不介入のため当事者同士の不毛なやり取りになりかねますしそこに労力や時間を割くくらいであれば、比較されたときに自社が選ばれるような商品設計だったりプロモーション戦略のほうに注力すべきで、競合が効果合わず撤退せざるを得ない状況にしてしまえば自ずと商標という戦場における競合は減っていきます。

なのでいくら自社の商標キーワードを利用して出稿している他社がいたからといって、けっして脅迫まがいな通達をいたずらに送らないよう気をつけてください。

違反出稿のパトロール

商標キーワードで検索して、意図していない自社商品の広告が出稿されていないかは定期的に要チェックです。

残念なことに違反出稿を行うアフィリエイトサイトは淘汰されていません。しかもそれだけじゃなく「深夜帯にだけ出稿」とか「クライアントや代理店がいる地域だけ除外する」とか目視しづらい環境下を構築し、よりタチの悪い運用手法をとってきています。

ASPに案件として卸している企業は、違反出稿のパトロールは切り離せないものだと考えてください。

商標権侵害の申し立てを行う

リスティング広告のサービスを提供しているGoogleやYahoo!では、そのプラットフォームを通じて第三者の利用を制限したり、異議申し立てを行うことができます。

これはキーワード挿入機能にも有効です。
ECモールが商標を広告文として使用しているケースは多々ありますよね?ほかには聞いたこともないような検索エンジンプラットフォームが商標を広告文に使って宣伝しているのよく見ませんか?

商標名 | 結果

みたいなやつ。

これはGoogle広告やYahoo!広告に備わっている機能の一つなのですが、動的だろうと広告文に商標が入っている場合には使用制限を加えることができます。

参考 商標権所有者様向けヘルプGoogle広告ポリシーヘルプ 参考 商標権者による商標の使用制限の申請についてYahoo!広告ヘルプ

もちろん商標権を所有していることが前提ですのでご留意ください。

最後に

商標周りはアカウントの運用法以外にも注視すべきことが沢山あります。

商標名ももちろん重要で「検索エンジン、Googleトレンド、Googleアラート、SNS」などのツールを用いて自社商標の浸透度を定点観測をする際にもノイズがないほうがわかりやすいので、長すぎず短すぎず商品が想起できて独立したものが理想ですね。

これを機に事業者や運用者が「商標登録してみようかな」「商標キーワードの運用から見直してみようかな」とアクションするきっかけとなれば嬉しいです。