運用型広告の広告文には文字数制限があるものの、困ったことに表現は無限大です。
その広告文一つで赤字も黒字も左右され、運用型広告における要であることは間違いありません。
そんな広告文の作り方の自分なりのヒントをシェアさせてください。
さて、本記事を書くにあたって記事LPを用意しました。
タイトルの通り、案件は「電子ピアノ」を想定して制作したので適宜参照としてお使いください。
運用型広告でボリュームを生むことができるコンテンツ向け広告は画像と組み合わせて一つのクリエイティブとすることが大半ですが、研ぎ澄まされた広告文はどんな画像と組み合わせても使えることが大半で、媒体を跨いだ横展開が効いたりもします。
なので僕はここの作業を決して妥協しません。時間がかかっても”良いコピー”ができるまで考え抜きます。
すべての過程が針の穴に糸を通すような作業です。
検索広告を作るときも、コンテンツ向け広告を作るときも、僕が運用型広告の広告文を作るときのルール基盤としていることを共有させてください。
この記事の目次
3大前提
WEBに限った話ではないのですが、広告を作る際には必ず、以下の3つが出来ていないと作ることができないので最低限浚います。
1.商材を知る
書くのが恥ずかしいくらい当たり前のことなんですが、商材のことを深く知っているほうが良い訴求やコピーを生むことができます。
これは価格とか商材の機能や特徴ももちろん、商材を理解することはユーザーへ多面的な角度から柔軟に提案ができるかどうかということにも直結します。
また、広告主しか知らない情報も山ほどあるので教えてもらいましょう。リード系の案件なんかはとくに、商材知識がない場合にはヒアリングなしに広告を作ることは不可能に近いでしょう。
2.ターゲットを知る
商材の理解があっても、ターゲットユーザーへの理解がないと広告を介したコミュニケーションに乖離が生まれてしまいます。
「そんなことが知りたかったのか」「そんな需要があったのか」
商材理解があったうえでここを知ることができると、いろんな案が浮かぶこともしばしば。
「ペルソナを作れ」とよく言われるかもしれませんが僕はどっちでも良いと思います。ただ、用途を間違えると無意味どころか広告作成の邪魔をするくらい危険だと思っています。
ペルソナというのは、広告を作ったときにペルソナが反応しそうかどうかを照らし合わせるときに使うことが最も効果的だと考えていて、広告はペルソナのために作るものではないと考えています。ここを混同もしくは逆で捉えないように注意したいです。
僕はSNSを始め知恵袋やガルちゃんを見たり、周りのひとに聞いたり、クラウドソーシングでアンケートをとったり、とくに目新しいことはしませんが、ズレを生まないためにも可能な限り理解を深める努力をします。
3.配信面を知る
自分が作った広告がどこに配信されるのか、ユーザーに対してどのような視認性を与えるのか。
今回の場合はとくに媒体を指定しませんが配信面を見て、
- どのようなコンテンツが出ている面か
- どのようなクリエイティブが合いそうか
- どのような広告が出ているか
- 上記をテーマにフォーマットごとの掲載面
なんかをチェックします。
訴求や広告文の想像のために活用することはもちろんですが、「競合がこのような広告を出しているならうちはその逆をやろう」「こういう訴求ないけどいけるんじゃないか?」など様々な戦略の幅に繋がります。
できればターゲットユーザーが見るような時間帯・シチュエーションで且つ、端末も合わせることを推奨します。
+α.トレンド
上記3点は必須ですが、ここに加えて季節性だったり時事性、時と場合にあわせてさまざまなネタを挟むことは有効な場合が多いので、このあたりは敏感になってください。
また、不況時には消費のスライドが起こります。可処分所得はいままでとまったく違うものへと消費されます。
就職難が起こると教育業が盛んになり、パンデミックがくると美容・健康への投資が増え、おうち時間が増えると衣食住への投資の仕方も変わります。衣類はルームウェアやカジュアルなものが売れ、食は冷凍食品や宅配サービスが盛んになり、住では家だけでなく、電化製品やオンラインサービス、家庭用ゲームも伸びたりします。
アンテナを高く張っておくことは必須ですが、そこにどうアプローチしていくかもかなり重要です。
【小話】汎用性のある型の例
メンター発言調
投資家「金持ちの基本」業界激震
のように権威性があったり、ターゲットのメンターとなり得る人物が提言している風なクリエイティブです。
これの応用として、
年収300万夫「3年早く知りたかった」
のようにコンプレックス対象が克服した後の発言のようにするものがあります。
動詞+メタファーor動詞+本来の用途ではないもの
前者は「塗るストレートアイロン」「着るフィットネス」など隠喩・暗喩表現を用いたものです。
後者だと「貼るヒアルロンサン」「飲むシリカ」などがありますね。
提案型
僕が作る広告文はこの型を意識したものがほとんどです。
商品を画像もしくは広告文のクリエイティブに盛り込むパターンです。
CPM課金媒体ではCTR出ないから不利では?と思われるかもしれませんが、意外と出ます。
コツとしては「ユーザーの知らないこと」だったり「意外性」や「提案」、「独特な言い回し」を意識することですかね…。
投資案件では「不況になると口座開設が殺到?」と需要を教えてあげたり、ライフライン案件では「電力自由化で〇〇円の差が…」と(気にはなっていた)みたいなユーザーの重い腰を持ち上げてあげたり、高額商品であれば「大半がシェア購入!」のように買い方までクリエイティブで指南することも多々あります。
電子ピアノ販売における広告文作成の過程
では、実践といきましょう。商材は『RolandのFP-10』という機種の電子ピアノです。
冒頭で紹介したこちらのサンプル記事に遷移する想定で作成します。
プロセス1.商材を知る
本格的な実践をするとかなり長くなってしまうため今回は比較過程等を省きますが、実際作るときには競合すべて洗い出して優位点や相違点を見つけます。
今回の場合に抑えておきたいポイントは下記2点。
- FPシリーズが自社もしくは他社製品の電子ピアノと比べたときの固有性能、優れている部分
- アコースティックピアノ(生ピアノ)と比べたときのメリット
ここを焦点とし、ユーザーが必要と感じるであろう機能に絞って特徴を抑えておきます。
今回の場合ですと以下ですかね。
- エスケープメント機能
- モデリング音源採用
- 88鍵
- 鍵盤の素材が象牙調
- 外部の音漏れ気にせず弾ける
- モダンでスタイリッシュ
- 安い
- 奥行きなくコンパクト
- 音色変えられる
プロセス2.ユーザーを知る
電子ピアノ購入するようなユーザーがどのような人かを知る必要があります。
ここのプロセスでは想像したり、3大前提で紹介したような手段を使ってここをリサーチします。
- 過去習っていたブランクある社会人
- 子どもへピアノを習わせようか検討している人
- 大人になってから独学でピアノを始めようとしている人
- 老後の趣味で始めようとしている人
年齢・性別2軸のライフステージで考えるとこんな感じですが、深堀りしていくとある意外なことがわかります。
それは、ピアノを売ろうとしている人が多いということです。
この理由は様々なんですが、単なるダウングレードではなく、コスト面だったりサイズや持ち運び面などの利便性からくる電子ピアノ特有の需要なんです。
このようなニーズはリサーチなしには発掘できませんし、ここを知ることができるとクリエイティブにも記事にも活かすことができます。ユーザーの抱えてるニーズは徹底的に洗い出しましょう。
プロセス3.配信面を知る
今回、特に媒体の指定はしないのでこのプロセスは省きますが『Google・Yahoo!・LINE』これらのマンモスプラットフォームがどこもニュース面を抱えているので、ニュース系の面をなんとなくレベルで意識しようかと思います。
もちろん媒体間でそれぞれ若干のニュアンスが違うので当たるクリエイティブが異なったり、審査基準も違うため、実施する媒体をよく見るようにしてください。日常的に使うようにしてください。
競合広告の分析だったり、どのようなクリエイティブが映えそうかとか、目立ちそうな言い回しなんかをこのプロセスで考えておきます。
完成した広告文
これまでのプロセスをもとに、いくつか広告文の候補を作成してみます。
文字数制限は媒体によって違いますが、今回は全角20字という制限を設けようと思います。
音源の再生方法訴求
NG例:モデリング音源を使った電子ピアノ
OK例:「まるで生音」電子ピアノはモデリング一択
解説
NG例にあるのは直LP遷移のバナー広告であったり、リマーケティング広告・リターゲティング広告だったら良いかもしれないです。
これは、サンプリング音源とモデリング音源という概念をユーザーが知らないという前提のもと作成した広告文です。
このようにユーザーが知らないであろうことを「一択」などと言い切るのはCTRも高くつきやすいのですが逆に、記事にこの音源関連のコンテンツがないときの低CVRへの影響が顕著なので気をつけてください。
タッチ訴求
NG例:エスケープメント搭載の電子ピアノ
OK例:電子ピアノの優劣はエスケープメントにあり
NG例:まるでグランドピアノのようなタッチ!
OK例:買おうとしてる電子ピアノ、象牙調ですか?
解説
上段ではエスケープメント機能訴求、下段では鍵盤の素材軸で考えました。
NG例はどちらも特徴を謳っただけの広告文ですね。初心者が作る広告文に非常に多いです。
OK例に出した広告文はどちらもCTRが出づらいと思いますが、電子ピアノを買おうとしてる人に対して”電子ピアノ選定基準の肝”を伝えているクリエイティブになるのでCVRが高く出やすい広告文となっています。
デザイン訴求
NG例:どんな内装にも馴染む電子ピアノ
OK例:ピアノは見た目より機能と思ってませんか?
解説
作ったものの、どう考えてもこの訴求は弱いんで採用しないと思いますが一応(笑)
個人的にはデザインも重視しているふしがあるので、カッコいい商品画像とかと合わせたら結構映えるんじゃないかと……。
あとはわざと赤い電子ピアノとかを画像に使って「店員の言う通り黒にすれば良かった(泣)」みたいな広告文とか、黒い電子ピアノが内装にカッコよく馴染んでる画像で「赤にしなくて良かった(泣)」とかの広告文でも良いかもしれません。
このように画像ありきで広告文を考えるパターンも多いです。
デモグラ訴求
NG例:ピアノを始めたい社会人男性におすすめ!
OK例:僕はこの電子ピアノで独学練習してます
NG例:絶対音感が身につくのは7歳まで?
OK例:7歳未満のお子さんがいる方必見
OK例:子供にピアノを習わせるか悩んでませんか?
解説
【上段】NG例の広告文も決して悪くはないんですが、なんかSEO記事のタイトルにつきそうな汎用性高い文章ですし、OK例の広告文の方がいいよね、程度のものです。
それに記事LPの冒頭に演奏動画がコンテンツとしてあるからこそこの広告文が有用です。
本当は「僕(社会人)が独学でピアノを練習した結果」「社会人男子必見!独学でここまで弾ける」にしたかったのですが、ちょっと無駄クリックの懸念が拭えなかったため不採用としました……。
【下段】これ、NG例の広告文は一見「けっこー良くない?」って思ってしまいがちな典型例なんですが、ターゲットユーザー以外が多分に反応してしまう上に意外とCTRも高くないというオチがおそらく待ち構えています。
なので「7歳未満の子供がいる人」もしくは「子供にピアノを習わせるか悩んでる人」だけがクリックするような広告文が優秀と言えます。
OK例の広告文を採用する際は「絶対音感は7歳まで」のような画像を採用する想定です。
こうすることで前者の広告文の場合に何の話であるかを伝えた上でクリックさせることができますし、後者の広告文の場合には7歳より上の子供がいる人の無駄クリックを避けることができます。
このようなコンテンツは論文やなどで裏がとれている場合にだけ採用します。僕はよくGoogle Scholarを使います。
参考 Google ScholarGoogleちなみに絶対音感には臨界期が存在し、6歳を超えると絶対音感の習得が困難になることが以下の論文で綴られています。
参考 なぜ絶対音感は幼少期にしか習得できないのか?J-STAGE意識するポイント
ビジネスインパクト
広告文を作成するときは基本的にボリュームを意識することをおすすめします。とくにブロード配信においてはマジョリティを掴んでいかなければなりません。
商材ジャンルとかをラッコキーワードとかでサジェスト全コピしてキーワードプランナーにかけるだけでも参考になります。
電子ピアノの場合、やはり「タッチ」を求める人が多かったので、クリエイティブでも記事でも触れるように特にここは意識したりしていました。
文脈を守る・一貫性を持たせる
アレもコレもと詰め込もうとすると、いつの間にか訴求するポイントがブレたりするので気をつけましょう。
NG例:脱毛サロンは徐々にムダ毛が薄くなっていくけどこれならお家で短時間で簡単!
解説
「けど」という逆説を使っているのに、前後での整合性がないパターン。
前半では「ムダ毛がなくなるまでの期間」について話しているのに、後半で「処理スピード」や「手軽さ」に軸がズレてしまっています。
正しい日本語を使う
意図的にやる場合にはいいのですが、略しすぎて変な日本語にならないように意識してます。
あと文字数制限によって変な日本語になるくらいであればコピーそのものを変えることをおすすめします。
NG例:40代主婦愛の製薬社サプリ
OK例:40代主婦が愛用する製薬会社のサプリ
視認性を意識する
初動段階では必ず大きくテストしてから小さいテストに移ってください(最初の大きくも適当ではなく確度を高めるためにリサーチしたうえが望ましいです)。
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初動でこんなテストにお金を使うよりは、
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このようなテストしたほうが建設的ですよね?
どのテキストが当たるかテストしよう!というよりは、自分が良いと思った単語や言い回しだったり、リサーチしたうえでユーザー間で一番使われているフレーズなどを採用することをおすすめします。僕はここの決定を下すときはキーワードプランナーかTwitter検索を使っています。
「配信安定してちょっと余裕ができたな」というフェーズになって初めて着手するところかなと思います。
最後に
ここまで紹介したのはあくまで僕なりの一つの考え方にすぎず、予算・実施媒体・運用状況・クライアントワークによって戦略も様々なので、置かれた状況下でのベストな広告文作成ができるように共に切磋琢磨していきましょう。